今日は、旬の安い時期に活〆にした雌の渡り蟹を大量に買い込んで、真空パックして冷凍しておいたものを使ったパスタ料理です。
この子持ち渡り蟹のクリーム・パスタなんですが、バブルの時期には盛んに「イタ飯屋」と呼ばれていたイタリア料理店で猫も杓子もどこでも出していたのですが、少なくともわたしはイタリアでこんなパスタを食べたことはありません。
どうやらこれは、日本で考えられたメニューではないかと疑っているのですが、バブルが崩壊して、むやみやたらに料理店に行って大枚を叩くということがなくなった頃から、このメニューは廃れてあまり見掛けなくなってしまいました。
ですが、このパスタ料理は食べるとむっちゃ美味いので、わたしも時々作っていますが、子持ちの雌の渡り蟹さえ入手できれば、できあがったパスタが非常に見栄えがするので、作っていても楽しいものなのです。もちろん、ホーム・パーティなどで出すと、えらくうけるので作った人の評価も上がります。
ただし、渡り蟹は冷凍された安価なものが海外からも輸入されていますが、どうにも品質が安定せず、捌いてみると臭みがあって料理に使えないということがあったりします。そうなると廃棄するのは惜しいので、下茹でして臭みを抜いて、出汁に使う(アメリケーヌ・ソースを作ります)ことにしていますが、酷い時には半分は料理に使えないことすらあります。ということで、できれば生きているものか、活〆にしたものを購入すると良いでしょう。
なお、雄の渡り蟹は、甲羅を外して半分に切ったものが格安で売られていますが、こういう蟹は味噌汁にすると絶品ですが、この料理には使えません。必ず子持ちの雌の渡り蟹を、入手してください。ちなみに、わたしは愛知県のまると水産というところから買っています。今の時期はもう旬の最後なのですが、まだ雌の子持ち渡り蟹が売られているので、自分でもやってみたいのなら、まると水産から購入すると良いでしょう。
■材料(2人分)
雌の渡り蟹 2匹
サルサ・ディ・ポモドーロ 大匙6杯
生クリーム(35%) 100cc
白ワイン 100cc
大蒜 2片
イタリアン・パセリ 2〜3本
オリーブ・オイル 適量
塩 適量
まず、渡り蟹の解凍をしますが、冷水を大きなボウルに入れて凍らせた保冷剤を入れ、そのなかで氷温で解凍するとドリップがあまりでません。冷蔵庫で一晩おいて解凍しても良いのですが、長時間おくとドリップがでるので、わたしはあまりお薦めしません。
ここからは渡り蟹を捌くのですが、必ず出刃包丁を用意しましょう。所謂牛刀や三徳包丁で捌くと、蟹の甲羅が硬いので包丁の刃が欠けたり、おもわぬ怪我をします。出刃包丁なら蟹の足に包丁を当てておいて、包丁の背をばんばん叩いて切っていけるので、安全に調理ができます。
それでは、実際に捌いてみましょう。
まず、甲羅をはずしますが、そのまえに所謂ふんどしとよばれる部分を身から外します。次に、ふんどしを外すと甲羅の下に隙間ができるので、そこに親指を掛けて、静かに甲羅を外していきます。ちょっとだけコツが要りますが、慣れれば簡単です。
甲羅を外したら砂袋を外します。口の下の部分についている黒い色の袋がそれです。ていねいに取り除きましょう。さらに、白い海綿状の部分を両側とも取り外します。ここは美味しくないですし、口当たりが悪いのできれいに掃除しましょう。
ここまでできたら、胴体を半分に出刃包丁で割ってから、出刃包丁で足をバンバン切っていきます。出汁がよく出て蟹の身を食べやすいように、鋏(はさみ)の部分も出刃包丁で割ってやります。なお、蟹の足に布巾などを掛けて出刃包丁で切ってやると、蟹が飛び散らないので、楽に下拵えできます。
すべての足を割って、良く出汁がでるようにしましょう。これで蟹の下拵えは終了です。ここまでできれば、あとは炒めるだけなので簡単です。このあたりでパスタを茹で始めると良いでしょう。
冷たいフライパンに刻んだ大蒜を入れて、オリーブ・オイルを注ぎます。ガスコンロに火をつけて中火の弱火にします。ふつふつとオイルが沸いて大蒜から香りが立ち上るのを待ちます。
フライパンが温まってきたので、分解した蟹を入れて炒めます。このとき木べらなどで出汁がでるように、蟹を押し潰しながら炒めます。甲羅の裏には味噌と卵があるので、潰さないように注意しながら炒めます。
蟹の甲羅が赤く色づいてきたら、白ワインを分量注ぎます。白ワインをしばらくの間煮詰めて、酸味とアルコールを充分に飛ばします。
白ワインが煮詰まってきたら、サルサ・ディ・ポモドーロを分量入れて混ぜ合わせ、しばらく待ってから生クリームを分量いれます。全体が暖まってきたらイタリアン・パセリを半量入れます。ここで火加減は弱火にします。
そこに湯切りしたスパゲッティーを入れて、よく混ぜ合わせます。蟹の甲羅は取り除いて飾りに使います。
ソースをちょっとだけ味見をして、塩気が足りなければ、ひとつまみ塩を入れます。スパゲッティーも1本とって味見をして、アルデンテになっていることを確認してから、皿に盛り付けます。残りのイタリアン・パセリを散らして完成です。
それでは、いただきます。